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日常にまつわる心の働きには「期待」がある。期待とは差異のことだ。時の移行のな かに定常的であることが期待され、定常的な時のなかに移行が期待される。このずれ においてもう一つの心理、「不安」が到来する。不安によって日常は、安んじて帰還 できる手軽な楽園とみなされ、いまここではない「いつかどこか」を呼び寄せるため の祈とう所となる。こうして日常は期待と不安のサーキットを形成する。 しかし秦如美の写真が伝えているのは、そんなサーキットの心理学ではない。そうで はなくサーキットの周囲にある、逃げ場のない、直面する物理的な心の震えである。 震えているのは「この私」ではなく「周囲の事物」であり、その中に「私という物」 もある。
倉石信乃(批評家・明治大学准教授)
作家略歴
2002年 東京綜合写真専門学校研究科卒業。
同年、写真集『月の棲家』(冬青社) を刊行、
また新宿ニコンサロンで個展開催。
2004年 から継続中の国際交流基金主催に よる国際巡回展
「アウト・オヴ・オーディナリー」展に出品。
現在、東京在住。
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