外界にレンズを向け、シャッターを切る。それによって獲得された
イメージについて考える。そしてその中から何らかの手応えを得た
イメージを他者にむかって差し出す。写真家の営みとはこうした
サイクルの繰り返しだと言えるかもしれません。その営みを通じて、
写真家は何を目指しているのか?私たちに差し出される写真に彼ら
が感じた“手応え”とは一体何なのか?
ある種の写真家にとってその目指すものや手応えとは、何かが分
かること、はっきりとした答えを得ることではなく、むしろ新たな
問いや謎に出会うこと、そしてそれらがはたして他者と共有しるも
のであるかどうか、その不確かな可能性を問うてみることにあるよ
うです。小平雅尋もそうした、どちらかといえば狭き道をたどろう
とする写真家の1人です。
今回の展覧会は、2011年に出版された写真集『ローレンツ氏の蝶』
および、それ以降の作品によって構成されます。不断に続けられる
世界との細やかな対話の中で紡ぎだされてきたイメージの群を通じ
て、本展が、世界についての、あるいは写真というメディアについ
ての、魅力的な問いや謎に出会う機会となることを期待しています。
[増田玲・本展企画者]
小平雅尋 こだいら まさひろ
1972年東京都生まれ。
1997年 東京造形大学造形学部デザイン学科類写真コース卒業。
写真家として活動するとともに、大学在学中から写真家大辻清司の作品・資料のアーカイブ作業に参加、近年は大辻作品などのプリントも手掛ける。
2011年出版レーベル・シンメトリーを設立。東京在住。
展覧会・出版物
1996年 個展 「POPLIFE(dutchroll)」池袋 ギャラリールポリエ
1998年 個展 「写真の在りか」 北鎌倉ワイツギャラリー
2002年 個展 「ローレンツ氏の蝶」 アイデムフォトギャラリーシリウス
2003年 グループ展 「写真2003」茨城県立つくば美術館
2005年 個展 「御柱」アイデムフォトギャラリーシリウス
2009年 個展 「続きの代わりに」 銀座 月光荘
2010年 グループ展 「Gin-En」東京アートミュージアム
2011年 写真集『ローレンツ氏の蝶』(シンメトリー)
2013年 グループ展 「リフレクション」Place M

小平雅尋 他なるもの
|