内野 桃




   「鳩と洗濯と大根と海」

 
  



会期=2014年1月20日[月]-1月25日[土]
会場=表参道画廊
時間=12:00-19:00(最終日17:00まで)








「鳩と洗濯と大根と海」



 シャッター切ったのは感動したからではなくて、直感がはたらいたからというほうが正直である。なぜ撮ったのか、すぐに理解できない。引き伸ばしたものを週に1 回、大学の階段教室の机に並べて眺めた。毎週少しずつ枚数が増え、自分の写真の動機にトボトボと気づくようになる。

 カメラを持って歩いていると無心になる。カメラにフィルムをセットして数枚シャッターを切る。さっきモノクロフィルムを入れたのか、カラーフィルムを入れたのかすっかり忘れてしまう。36 枚撮り終え、カメラを開けてから「ああ、カラー(またはモノクロ)だったのか」と気づく。セットの際に確認していないわけではない。水や空気や風にはほんとうは色がない。

 海と森に囲まれた場所で撮影した。初めてその土地を訪ねた日にその土地の空気をとても居心地良く感じた。そこへ行く用事を写真に担わせた。これでしょっちゅう行くための立派な理由ができた。

 私は百道浜と油山の間にある町に生まれた。油山へ行くことはあまりなかったけれど、家の窓からきれいに見えた。海といえば百道浜。いつも散歩した。浜辺でぼんやり過ごした。東京で暮らしていると
浜辺が恋しい。海は青いし、波音がするし、カモメの鳴声が聞こえるし、砂浜は白くて広いし、風が吹いているから心地いい。私はいま心地いい景色を欲しているのだと思う。感性は幼少期に育まれて、大人になってそれを愛しんでいるのだろう。

 自分の感性にうっとりしていることを認めると虚しくて悔しくて恥ずかしい。本当の本当は自分なんてどうでもいいと言い切りたい。写真をやめないのは、このしごとには自分への回帰の他にも必ずちゃんと理由があると強く思えるから。どうして信じられるのか正直に言うとまだわからない。だからこの作品ははやく自分の手元を離れて、ただそれだけになればいいと思う。手元で大事にしているので自分へ回帰してしまう。世界は私のものではない。この作品が自分のものだけでなくなることを願う。








展示予定作品:
作品点数 32枚
制作年 2012年
材質・技法 タイプCプリント、ゼラチン・シルバープリント
サイズ 356×432mm






□内野桃(うちのもも)

1990年 福岡県生まれ
2013年3月 東京造形大学造形学部デザイン学科写真専攻領域卒業
2013年4月 明治大学大学院理工学研究科新領域創造専攻ディジタルコンテンツ系入学、在籍中