「compression puzzle」
   

  東京綜合写真専門学校 平成30年度
    甲斐啓二郎クラス展

 


      羽田野 沙季(ハダノ サキ)
     王 嘉偉(オウ カイ)
     陳 伊寧(チン イネイ)
     加藤 颯馬(カトウ ソウマ)




会期=2018年11月26日[月] - 12月1日[土]
会場=表参道画廊
時間=12:00-19:00(最終日17:00まで)
   


      




 

 Compression とは圧縮するという意味の単語だ。圧力をかけてその力の軸の方向へ 対象が小さくなることを目的とするのが圧縮だ。写真という表現もまた、この圧縮に 近い作業を展開しているように感じる。 カメラは常に今に対して向けられるものだ。時間軸の中で意図的にシャッターを切 る作業の中で、1つの画像が生まれる。今という対象は、必然的に接している現実世界 だ。それに対し私たちは五感や言葉にできないような感覚で向き合っている。映画や 音楽、写真や絵画などの表現は、この説明できない感覚と現実世界の1秒1区と比較す れば、完全なフィクションであり、それらの極一部に対してしかアプローチできてい ないのかもしれない。しかし今が今過ぎていくように、人間は見ている世界を自分の 目と脳だけでは細分化し固定して見ることはできない。そう考えるのであれば、写真 はそれらの一つの結果としての完成物なのかもしれない。違う形に変換するのではなく、違う形に圧縮されたものを組み直していく。

ある作家は、日常的な風景や人工物を、mirages、蜃気楼に例えた。人間と現実世 界と時間軸という世界の中では決して認識できない光や色を再現し、終着点の見えな い曖昧で霧がかかったような世界を展開させた。まさに彼女にとって写真は日常の圧 縮の先の完成物なのかもしれない。

またある作家は、20代女性達の単調なポートレート写真を並べ、Dahlia、ダリアという花 に例えた。メキシコ原産のダリアは、1789年にスペインに渡り、1842年にオ ランダから長崎へと持ち込まれ日本へ運ばれた。不安定、移り気、華麗、優雅といった花言葉を持つ。単調で一見何の変哲も無いような写真が、この花言葉を 知った時に、 彼女達の内面や人生への興味をそそる。色気や官能美を欠いた写真だからこそ、その 深層を探る心を揺さぶるのかもしれない。

またある作家は、スナップショットを日和と題した。スナップショットと言えば一 見躍動感がありポテンシャルでぶつかるような感覚だが、彼は感覚的に目的もなく撮影した大量のデータの中にこそ自身の作品を作るきっかけがあると言う。 「写真は沈殿する時間が大切である」とも述べている。都会の中で呆然と歩き続ける人々を感覚 的に切り取る一見ストイックな作業を、単調な身体性として捉え、それら大量のデー タを冷静に編集していくことが「沈殿する時間」ということなのかもしれない。

またある作家は、故郷の北海道の原風景を、 trace、痕跡という一つのコンセプトの もと切り取っている。モノクロームの単純な構図の風景写真だが、そこには、水害、 季節、風、様々な痕跡が写り込んでいる。彼の写真には黒く潰れた部分は少ない。か すかにだが、必ず何かが細部に写り込んでいる。彼は光画の素材として被写体を認識 している。だからこそ細部を見せ、写真的に、視覚的に被写体を捉えている。現実世 界や他の表現との確固とした差別化を目的とし、写真にしかでき得ない表現の中で、 自身にとっての原風景、過去や出来事と向き合っている。

写真学生として3年目の作家達が自身で選んだ対象達を写真というツールで圧縮し、 それらの小さなピースを並べ、ひとつの作品として成立させる、それらの始終の一片 をご覧いただければと思います。

                                                                           写真芸術第一学科 加藤 颯馬












<出品作家プロフィール>


□羽田野 沙季(ハダノ サキ)

 1997年 神奈川県生まれ
 2019年 東京綜合写真専門学校卒業予定





Dahlia






 
□王 嘉偉(オウ カイ)          

 1990年 中国浙江省生まれ
 2019年 東京綜合写真専門学校卒業予定


日和






□伊寧(チン イネイ)

 1993年 中華人民共和国生まれ
 20〇〇年 東京綜合写真専門学校卒業予定


mirages








□加藤 颯馬(カトウ ソウマ)

1997年 北海道生まれ
2019年 東京綜合写真専門学校卒業予定


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