oct,2001
 






ウルトラノワール展

 


これは、モードとアートの展覧会である。ウルトラノワール=超越の黒。まるで黒を祭るようなこのイベントが、時としてニューヨークのテロリストによる惨事に対して沈黙するかのように、パリのプランタン百貨店で始まった。パリでは事件の翌日正午に、メトロや観光地、公共機関、会社、そして、ここプランタンで、黒いヴェールをまとったイスラム教の婦人も含む人々が、一斉に3分間の黙祷を行っていた。また、例年はパリ中のモード関係者を招待して華やかに始まる展覧会のオープニングパーティは行われなかった。

一歩プランタンの店内に入ると、まず普段より人数の増えた警備員が、白いワイシャツに黒のスラックスとネクタイ姿である。そして、ウルトラノワール展のポスターも当然、黒。各階の商品である洋服や雑貨まで黒なのだが、何となく黒の意味する多様性が、今はどうしても葬儀のイメージにつながってしまう。

この展覧会を企画したカトリーヌ・オーメンは、モードの歴史家で、マルセイユ美術館のキュレーターの前歴を持つ。彼女は黒を民主主義とみなし、古いものと新しいもの、平凡なものと稀少なもの、チープなものと高価なもの、フィットとルーズの両面性を持つという。あらゆる雑多なものとの組み合わせが可能で、全く対極のものとの交ぜ合わせが可能である。

流行の移り変わりの中で黒は常に存在感を保ち、黒はシャネルのフェティッシュカラーであり、イヴ・サンローラン、ソニア・リキエルもこよなく愛す色である。そしてカラーを好むラクロワさえも行き着くところは黒に帰結する。コンテンポラリーアートにおいても多くの黒をテーマとした作品が生れている。デザイン、建築、インテリアでは、黒は極東オリエント的であり、日本的であり、ミニマリズムであり、世界的である。

展覧会では、有名デザイナーのオートクチュール他、ウォーホールのモノトーンのマリリン、それをペイントするロバート・コンバ、アービング・ペンを思わすヴァレリー・ベリンのモノクロームの写真、そしてパリ在住の田原桂一氏による光の彫刻等が出品されている。

モードの世界にとって重要なパリコレも開催されるこの時期だが、2001年冬のコレクションは、ウルトラノワール=超越の黒。それは、最も威厳があり、力を持つ不変の色。そして、最も多面性のある自由な色である。 (10月13日迄)
      

 

●amiart


過去の"Paris News"は こちらからどうぞ