sept,2001
 

 

 

 

アルフレッド・ヒッチコックとアート展

 
 9月。観光客の姿も消え、いつもの顔が戻りはじめたパリ。8月はレストランも、ギャラリーもほとんどが夏休みをとっていたが、世界中から来た人々が、パリの名所や美術館を訪れた。 パリジャンの間で通称ボボといわれている、現代美術館ポンピドゥーセンターも、この時期は各国から訪れる人のために、世界的に有名なアーティストの展覧会を催している。昨年は「ピカソの彫刻展」、そして今年は「アルフレッド・ヒッチコックとアート展」である。(9月24日迄)

 この20世紀を代表する映画監督の生誕100年を記念した展覧会は、世界中をまわり、日本でも東京オペラシティアートギャラリーと、広島市現代美術館で「アルフレッド・ヒッチコックと現代美術」というタイトルで開催された。
 ヒッチコックに影響された現代アーティスト展に対して、パリ発のヒッチコック展は、フロイトやポーもそうだが、その映画のイメージを直接引き起こしたと考えられる、絵画やオブジェの展示によって構成されている。

 ルオー、ルドン、ダリ、デ・キリコ、ムンク、マグリット、ピカビア、エルンスト、そしてビアズレイやクノプフの絵画からそれぞれの映画のシーンが浮き上がってくる。ロバート・ボイルの絵コンテもかなり精密なものだ。
 ダリがデザインした宙に浮く眼球郡が夢のシークエンス、「白い恐怖」を作ったように、当時前衛とされていたあらゆる作家の表現を見事に取り入れて映画にした。役者に関してもそうだが、美に対する徹底的な選択と手法がヒッチコック映画の醍醐味である。
 ビデオで「サイコ」のあのシーンを見ながら、リアルなシャワーカーテンのある部屋のインスタレーションを観る。まるで、今、自分がその現実を歩いているようだ。子供の頃に見て、初めて戦慄というものを体験してしまった1963年の映画「鳥」。スポットライトで写し出される自分の影と、ジャングルジムに集まる鳥のオブジェのセットからは、懐かしさと共に戦慄を感じた記憶が甦る。

 ポンピドゥーの映画館では未公開フイルムも含めた全作品の上映とTVプログラムを一挙に紹介。
 この夏の展覧会の締めくくりは、非現実的な現実を受け入れる時代の到来を思わせるものだった。ヒッチコックがウインクしながら送った謎のメッセージは、時代を超えて今も語りかけてくる。
「知りすぎていた男」でドリス・ディが歌う”ケ・セラ・セラ=なるようになるわ”というのが、意外とヒントになるのかも知れない。
 

●amiart


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