june 2009
 

ル・コルビュジェ
  のアトリエのあるアパルトマン


Le Corbusier's
STUDIO-APARTMENT





24, rue Nungesser et Coli 75016,
www.fondationlecorbusier.fr


 























 「近代建築の父」と呼ばれるル・コルビュジェ。
1887年スイス生まれ。〜1965年。

 パリの南西に位置するモリトールは、サッカー場や競技場などが集まっている地区である。パリの街並みと趣きの少し異なる雰囲気がある。道幅は広く、建物は明らかに異質である。

 アトリエのあるアパルトマンは集合住宅の最上階2層(7,8階)に、ル・コルビュジェとピエール・ジャンヌレによって設計され、1931-1934にかけて完成された。 当時彼はデザインの要素として「半径ー弧」を必須項目として確信していた。同時期の都市開発についての彼の提案のテストでもあった。

 アパルトマンの入り口にアトリエを示すスチールがある。横にあるブザーを押し見学したい旨伝えるとそっけない返事で「7階4号室」(!?)と言われる。オートロックが開きエントランスホールに入ると黒い円柱の柱が2本、と向きあう白い壁面も径の広い円柱状に空間のバランスを感じる。天窓からは自然光が入り閉塞感を和らげていた。

 エレベーターは6階までしか無く、そこからは完全にコルビュジェの世界に足を踏み入れる感じである。古城の尖塔への螺旋階段のように無機質なしかし暖かみのある階段を二回りするにつれ期待が高まるのを実感する。

 玄関のドアが開くと、眩しいほどの光と暖かな空気に包まれる。円柱の内側に入ったかのように、高さ3.50mの天井は弧を描き、計られた窓から煉瓦の壁に光線がひかれ時間と共に形を変えていく・・。窓ガラスもそのガラスの仕様も全てがそうなるべくしてそこにある、ことを体感できる至福の空間である。

 ここでの生活は実際、超未来形の理想郷であったと思う。シャワー室、バスルーム、洗面台、そして脚の高いベッド、間仕切り兼クロゼットにもなっている重厚なドアetc. ブーローニュの森を臨むと新緑が銀メタリックのように輝きを放つ。ゲストルームである上層階に向かう螺旋階段は天空へと繋がるような錯覚におちいる。すべてのアイテムが視界の中で構成され、平面作品になって見えてくる。

 というのも、ル・コルビュジェは今でこそ建築家として有名であるが、1918-25には、画家・シャルル=エドゥアール・ジャンヌレとして、アメデ・オザンファンと共にピュリスム[純粋主義]の創始者かつ実践者であった。

 「著書『キュビスム以後』(1918)の中で、キュビスムは装飾と夢想と主観におちいってしまったと宣言され・・芸術的救済は、「機械固有の正確さという教え」から導かれる抽象化された(すなわち、単純化された)芸術のなかから生まれるのだと彼らは信じた。・・・ピュリスムの影響は、この二人の創始者の絵画よりも、知的扇動者としての彼らの言説によるものであった。彼らは雑誌『レスプリ・ヌーボー(新しい精神)』を発行(1920-25)し、それはデ・ステイルや構成主義など、ユートピア的で有用性を考慮した芸術に関するフランス以外での考え方を紹介」した。(引用:「近代美術のキーワード」ロバート・アトキンズ著 嶋崎吉信訳 美術出版社)

 レジェの幾何学的な平面作品を思い出しながら、アトリエの窓をもう一度眺めてみた。黒い窓枠はオスマン様式の階層のように上部がより狭く、下方には居住空間の外壁が磨りガラス越しに写り込み、その日の空模様で違う表情をみせる平面作品となって
いた。






 


 

●linlin


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