oct. 2009
 

パリピナコテック
 

Pinacotheque de Paris




28, place de la Madeleine 75008,
www.pinacotheque.com


 







ロートレック:「二日酔い」
  (モデル:ヴァラドン)




ヴァラドン: 自画像 1883
  ポンピドーセンター所蔵


ヴァラドン:「もの想いのユトリロ」
 1911 ポンピドーセンター所蔵




ユトリロ:ドゥーュ村の協会 
1912 個人所蔵









 高級食品店が並ぶ商業地マドレーヌ寺院広場。フォションの隣に2007年にオープンした、収蔵品を持たない企画展専門の美術館がパリジャンの注目を集めている。

 地下1階と地上2,3階の3フロアの展示スペースで、見応えたっぷりの企画展を年間5〜6本のペースで開催している。オープニングの企画展は「ロイ・リキテンシュタイン」と現代美術を意識したスタートで、「既存の美術館の不足を補い、それらと一線を画す異なるアプローチ」をコンセプトとしている。訪れた時は、「ユトリロとヴァラドン展」が開催中であった。

 シュザンヌ・ヴァラドンは,エコール・ド・パリのモーリス・ユトリロの母として知られているが、10代後半からルノワールやロートレックなど著名画家のモデルとなり、その影響もあって自らも画家となった。多くの恋人の中にはエリック・サティもいたし、ドガの援助や資産家との結婚、ユトリロより年下の画家との再婚等々、私生活では自由奔放であるが、作品は画廊での大回顧展開催やフランス政府に買い上げされるなど画家として着実に実績を残した。1938年自宅で脳内出血で倒れ亡くなる。

 ユトリロは、ヴァラドンが18歳の時の子供で、父親は不明。10代でアルコール中毒になり、その治療のために絵を描き始めたが、母ヴァラドンとの制作接点は無いといわれ、人物中心の母と風景画の息子は独自のスタイルを確立している。

 この二人の組み合わせを企画する美術館は残念ながら日本にはなかったと思われる。勿論、作品を現地調達できる強みは比較しようもないが、日本におけるユトリロの抜群の知名度に比べ、ヴァラドンはどうであろうか・・。

 1階から展示順路は始まり、ヴァラドンの力強い素描、ユトリロのデッサンを中心に展示されている。ヴァラドンの作品群は点数こそ多くはないが、一つ一つの作品の魅力を十分に発揮している。展示は、時にヴァラドンとユトリロの作品が交互に並べられ、二人の線描を鑑賞者に確認してもらいたい、という学芸員の明確な意識と工夫が伝わってくる。

 順路が進むとユトリロの油彩の代表作が続く。そしてにわかに、ヴァラドンの凛とした油彩作品が目前にあらわれる。ここでも交互に配置された二人の作品に違和感はなく、むしろ不思議な調和を見せている。共鳴というか相互作用というのか、以前、(随分と昔)オルセー美術館で「ゴッホとモネ展」という作品上の共通項を比較した二人展を観たことがあったが、その時も「この二人の組み合わせか〜。」と感嘆するものがあった。

 展示を鑑賞し終わった後に、二人の画家の、その作風の印象が少しずつ変化する経過が刻々と脳裏をかすめ、心地よい記憶として定着してくのがわかる。
このような展示の仕方が鑑賞者の視点を幅の広いものにし、知らず知らずのうちに鑑賞者のレベルアップに貢献しているのだとつくづく感心てしまった。
ショッピング街の本格的なアートスペースとして
注目されているが、やはり企画力がものを言っている、流石、本場
パリに脱帽。。。








 


 

●linlin


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