jan,2002
 





山田 正好展
 


昨年、この表参道画廊でも行われたパリ在住の彫刻家、山田正好氏の展覧会が、パリのギャラリー、クロード・サミュエルで行われている。
今回のタイトルは「TROU BLANC(白い穴)」。彫刻の他、コラージュとデッサンの新作が、高架線の散歩道にある趣のある画廊を埋め尽くしている。
在仏30年になる山田氏が、現在に至る経過と今回の作品についてを語ってくれた。

――まず、山田さんがパリに来たきっかけと目的を伺いたいのですが。
yamada:1973年、武蔵野美術大学の研究室にいたのですが、この年に同大学のパリ賞を戴いて渡仏したのが始まりです。それからずっと住みついています。当時はとにかく作品を発表することが目的でした。

――ボザールにもいらしたんですよね。
yamada:ようやく学校から離れたところで、ここでまた学校へ行く事など考えていなかったのですが、たまたま好きな作家のひとりであるセザールが教授だと聞いて飛び込んでいきました。

――当初はどんな仕事をなさっていたのですか。
yamada:実はね、頭というテーマを持ってこっちにやってきたんです。だから、しばらく無機質、そして中性的な頭のシリーズを数年間続けていたんです。その後、胎児というイメージが頭の彫刻から生れた。胎児が自然の中で遊ぶようになって、立体の胎児が写真の風景の中でイメージとして固定され、そこからコラージュのシリーズが始まりました。これが、15年前です。

――コラージュとは?
yamada:全ての材料はパリの地下鉄で使われたポスターからです。言ってみれば、これが絵の具なんです。

――今回の展覧会では、新たな素材が見られますが。
yamada:そうですね。デッサンでは、30年間私のアトリエの屋根の裏で眠っていた、コールタールの層が登場してきました。彫刻作品としては、アトリエの中庭に転がっていた古い浴槽を使用しました。これらの素材も、ひとつの役目を終えた物なんです。それが、また、新たな生を得る。

――この浴槽の穴が、今回のテーマに繋がっているのですね。
yamada:「TROU BLANC」というのは、「白い穴」という意味の他に、「動揺」とか「錯乱する」という意味合いをもじっています。

――山田さんの意識の中にあるものというか。
yamada:私の仕事は白い穴を開けながら、心の中に生じた穴を埋める作業のようです。終わりなき旅を続けているのかも知れません。

パリの人として、日本人として、心の旅を続ける山田氏。旅の記憶なのだろうか。最後に今回の案内状にある彼の詩を紹介したい。



「白い穴」

古代エジプト人は、石の首飾り、ブレスレットを我々に残しておいてくれた。
しかし、鉄なき石器時代において、どのように、この小石に細い穴を貫通させえたかは、誰にも解らない。
ある識者達は考える。
「まず、石を丸く磨きあげて、その真上に糸を垂らし、水を落としていった...」と。
この硬い貴石にトンネルができるまでには、限りない時が、昼となく夜となく流れていったことだろう。
希望の光を得るための何という技。

今、確かに言えるのは、私の目の前に、エジプトの装飾品が横たわっていること。
私は見る。金糸で連なり合った光輝な石を。

今夜、私は闇の天空に向かって、一点また一点と光の穴を穿つ。朝が生れる前まで。でも、いかにして。

YAMADA MASAYOSHI 「TROU BLANC」展
Galerie Claude Samuel
69,avenue daumesnil 75012 paris
2001年11月24日〜2002年1月12日迄。

 

●amiart

 

 


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