パリ19区にある、ラ・ヴィレットは80年代に科学を主に未来空間を演出する場として誕生した。巨大な銀のジェオッドと呼ばれる球形の科学映画館が目印。音楽や美術の発信地としても、常にパリジャンに人気のスポットだ。また、広大な公園の芝生ではアフリカの太鼓のリズムが流れ、サッカーをしたり寝転んでいたり、大人も子供も開放的な雰囲気の中で一日が過ぎていく。 さて、ここのひとつの展示会場で「メキシコのインディアン展」が行われている。まず、展覧会の大きなポスターに圧倒されるが、このインパクトのあるモノクロ写真は、日本人写真家、鈴木邦弘氏の作品だった。 ルポルタージュ作家として活躍している鈴木氏は、コンゴのピグミーに始まり、難民シリーズといわれるソマリア、ルワンダ、ブータン、旧ユーゴスラビアなどを撮影し、93年には伊奈信男賞を受賞。フランスの写真エージェントと、この展覧会を企画したキュレーターが、鈴木氏の写真を見て、インターネットでアドレスを探し出し、今回の展示依頼にあたったという。 有名写真家集団のマグナムや、世界中のドキュメンタリー作家が写したインディアンの写真展。会場はテントのようで展示や構成にも凝っており、未知の世界の発見を存分に楽しむことができる。また、国や人種、民族、移民について様々な角度から考察され、私達に問いかけてくる。 人種のるつぼフランスならではの企画ともいえるが、こんなふうに自然にルポルタージュ写真を見る機会が日本でも増えれば、きっと何かが変わっていくのではないか。鈴木氏の作品は、今年、日中友好30周年の展覧会にも出品される予定だ。 「メキシコのインディアン展」 ラ・ヴィレット、パビヨン・ポール・デルヴリエ 5月22日〜11月17日迄。
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