nov,2002
 







パレ・ド・トーキョーでの
ルイーズ・ブルジョワ展

 



     



  

   
  








一世紀近くの生。1911年生れのフランス人ルイーズ・ブルジョワは、1938年にアメリカ人美術史家と結婚して以来ニューヨークに住み、彼女の記憶の中の様々な感情を解放し昇華への道を探る、ひたすら孤独な作業を繰り返してきた。1982年72歳の時、ニューヨークのMOMAで大回顧展が行われるまではアートの潮流とは無縁だったという。近年では、カッセルのドクメンタに出品、ロンドンのテートモダンのオープニングを飾るなど、91歳の現在、現代美術の最も重要なアーティストの一人としての評価を得ている。

パレ・ド・トーキョーで開催中のルイーズ・ブルジョワ展では、まず、新作の巨大な目の彫刻(椅子になっていて観客は座って休むことが出来る)に驚く。そして、1996-2002年に収録したブリジット・コルナンの新作ドキュメンタリーフィルムは、彼女の人間的魅力に溢れた私生活そのものをダイレクトに見せてくれる。日常の彼女の思想が、言葉、文章、あるいはデッサンによって解釈され、最終的に彫刻を生む。たとえば、母親の胸から流れ落ちる母乳。それが足元の子供にかからない。それは、悪い母親であるとデッサンを描きながら話す。カップ、あるいは陶器を落とす。床に落ちて音とともに割れる。それは事の終末。その行為によってひとまず争いを中断する。老婆の一つ一つの行為はフイルムの中で生きていく方法を教えてくれるようだ。1993年にナイジェル・フィンチがその様子を捕らえているが、いずれにしてもルイーズ・ブルジョワの生活は、少女時代の記憶が源泉となり、その記憶との闘いが芸術を生み出している。壁面一杯に広がるスクリーンには、ルイーズ・ブルジョワのキーワードが彼女の声とともに流れる。「私がどこへいくのか何時わかる?」「なぜ私達は地球にいる?」「誰が昼と夜を作った?」そして、問いかけが印刷されたA3サイズの紙に、観客はその答えを書き入れる。(答えられればの話だが)。また、音声の彫刻と題して小さな箱がいくつも壁に取り付けられている。そこから、フランスの子供なら誰でも歌ったことがあるに違いない童謡が流れる。もちろん彼女が歌っている。音はビジュアルよりも無意識を引き出しやすいという。それらの作品は、彼女の生き方を知れば知るほど興味深く、執拗に訴えかけてくる。

ところで、この会場は1937年の万国博覧会のパビリオンとして建設されて以来、様々な会場として使われていたが、ここ10年あまりは閉鎖されていた。それが今年1月にパレ・ド・トーキョー現代創造サイトとして新しくオープンしたのだが、開館時間は12時から0時迄としているのが特徴。仕事の後に立ち寄れるような、アートを生活の現場として捕らえようという意気込みが伺える。ライブラリーも旬な物が取り揃えられいる。レストランスペースはマイケル・リン作の空間。家族連れが気軽に訪れ、子供がお絵描きをしている脇では、隣り合わせた人どうしがアートの話しに弾んでいる。パレ・ド・トーキョーは、アートが壁に掛かる商品ではなく、自分たちの生活そのものなのだということを、強く訴えかける場所(空間)と作品からなる、非常に心地よいパリの新しいスペースとなった。

Louise BOURGEOIS
11月24日迄
Palais de Tokyo Site de Creation contemporaine
http://www.palaisdetokyo.com



 

●amiart


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