sept,2002
 







ダニエル・ビュラン展
 







      







今から15年位前、日本も景気の良い時代、主に海外の現代美術家を紹介する東高現代美術館が表参道にあった。当時は都内でもかなりホットなスペースだったと思う。そこで、初めてフランス人コンセプチュアル・アーティスト、ダニエル・ビュランの展覧会を観た。

それからパリに来て、17世紀に造られた美しい回廊、パレ・ロワイヤルの中庭を訪れた。もとは駐車場だったのを1985年に、ダニエル・ビュランが文化庁の依頼を受け、ここをストライプの円柱がリズミカルに並ぶ楽しい場所に変身させた。

現在ポンピドゥセンターで行われているダニエル・ビュラン展では、1960年代からの彼の仕事の軌跡をたどることができる。従来の芸術のあり方に対して反発していた彼は、パリの街中やメトロ、バス、建物など様々な所に、匿名のストライプを張り巡らせた。あらゆる場所が作品となり得ることを証明するがごとく、その媒体を介して派生する関係自体を追求した。

ストライプだけでなくキューブ等様々な形体を使って、発展していったそれは、ポンピドゥ全体がビュランのムードになってしまうほど、空間自体を楽しめる展示となっている。夏のヴァカンス時でもあったせいか、会場では普段よりも子供連れを多く見かけたが、鏡を使った部屋等のからくりが子供達には受けていたようだ。

玉手箱のような各部屋を抜けていくと、最後にパレ・ロワイヤルの庭園建設中に囲いとなっていた板塀があった。そこにあるのは、当時、通行人が残していった言葉の落書き。税金の無駄使いだとか、バカバカしい試みだとか。そしてテレビやラジオでの批評家の声も流されていた。人がどういう反応を示すか自体を楽しんでいるような、また、人に違いがあることを前提として全ての考えを飲みこむようなダニエル・ビュラン氏の顔が見えてくる。そういえば、大きな美術館の企画展では見たことないのだが、来館者が署名する記帳があった。きっと、また、自分へのあらゆるメッセージを楽しみにしているのだろう。彼に怖いものはない。

ところで、今年、表参道画廊で個展をした若手カメラマンの鈴木奈緒さんが、日本から作品制作の為に渡仏されて、早速この展覧会の写真をアートニュースの為に提供してくださった。カラーコンポジションを得意とする瑞々しいタッチの彼女の写真は、あらゆる場所を思いのままにカッティングする。彼女の作品となったビュランを、彼はきっと喜ぶに違いない。

ダニエル・ビュラン展-Le Musee qui n'existais pas 
ポンピドゥセンター 9月23日迄

 

●amiart


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